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いろいろな色の物語 大分県から絵の具をつくる まだまだ現在完了進行形

new教育普及 2019.04.13

 大分県立美術館教育普及グループでは、教材ボックスから発展した「大分県から絵の具を作る」を行ってきた。それは地域ならではのモノ、身近なモノを素材としての絵の具作りが、身近なモノをよく視る・触れることになり、日常からの再発見につながると考えたからである。これはやがて独自の視点でモノを視ることを誘うだろう。その内容を、2018年1月に「いろいろな色の物語 大分県から絵の具を作る」として1冊にまとめた(希望者は2階の情報コーナーにあるので、ぜひ、ご覧いただきたい)。しかしその後、何回も読み返す中、「しまった!勉強不足だ!」と思うこともまだまだ多く、2018年に行った特別ワークショップ・レクチャーに来ていただいた講師の方々とお話する中で、これはすぐに書き換えた方が良いと思った箇所があったので、ここに記したい。

< 緑 >
 『石から緑を得る』と題した章の中(p.20)に、「王塚古墳の緑は海緑石」と書いたが、それは古い研究によるものだった。ここの海緑石を緑土としたい。鉄の緑色顔料である緑土は、日本では今のところ海緑石と非常によく似ているセラドナイトという分析結果がある。しかし非常によく似た鉱物であり、厳密に鉱物学的に区別するのは簡単ではなく、緑土という言い方がいいかも知れない。

 さて絵の具とは、簡単に言うと色の粉に接着剤を混ぜたものである。その辺にある土に糊を混ぜれば、それで絵の具になる。しかし絵の具にも良質なモノと粗悪品がある。絵画は何かを伝えるため、後世に残すために描くのであれば、絵の具と支持体(紙やキャンバス)との相性も考えなくてはいけない。絵の具制作の歴史では、おそらく先人は様々なモノを試したことだろう。その中で適合したモノだけが残った。絵の具として適していないモノは伝統にならなかったのだ。

< 黒 >
 身近なモノが絵の具になるかどうかを実験した教育普及グループだが、『炭墨の ピグメントからインク系まで』(p.21)では、「姫島車エビ・シェル・ブラック」をはじめ、関アジ、関サバ、豊後梅、イノシシからカボチャのタネまで、地域のモノを蒸し焼きにして黒い顔料をつくった。ところが炭化させるときに使用した缶の内蓋には、乾かないネバネバしたものがつく。黒く炭化した車エビやカボチャのタネなども同じような感じで、乳鉢ですり潰すとサラサラの顔料の粉になるのではなく、ねっとりと乳鉢にこびりつく。油脂分なのか、水溶性である膠とは、うまく混ざらず、描いたときに筆運びが悪く、リンシードオイルで練った場合も、乾くのには、とても時間がかかる。果たしてこれは絵の具と言ってよいモノだろうか、と疑問がわいた。

 色名と材料の関係は興味深く、身の回りのモノから絵の具をつくる実験は、とてもワクワクし、日常が一変する。新しい視点で世界や物事を視ることができるのだ。では、いったい何を使えば大分県ならではの色をつくることができるのだろう。これから新たな視点で大分県を視ることができそうだ。
 
 

大分県立美術館 教育普及グループ 主幹学芸員 榎本寿紀