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「ムーミン展 THE ART AND THE STORY」紹介 -第1回- 多彩な表情、原画で

展覧会 2019.07.08

フィンランドと日本の外交関係樹立100周年を記念した「ムーミン展 THE ART AND THE STORY」が29日から大分県立美術館で始まる。担当学芸員が見どころを紹介する。
愛らしい姿とユーモアあふれる言葉で世界中のファンを魅了する「ムーミンとそのなかまたち」。フィンランドを代表する芸術家、トーべ・ヤンソン(1914~2001年)が生み出した「ムーミン」シリーズは小説や絵本、新聞連載コミック、アニメ、グッズなどさまざまな形で親しまれています。
トーベはフィンランドの首都ヘルシンキで、彫刻家の父とグラフィックアーティストの母という芸術一家に生まれました。まるで呼吸するかのように芸術に親しんで育ち、15歳には雑誌やポストカードのイラストレーターとして収入を得る一方で、スウェーデンやフランス、イタリアなどでデザインや美術を学び、画家としての地位を築いていきます。
1939年に第2次世界大戦が始まると、すぐに戦火はフィンランドにも及び、ソ連軍の侵攻でいや応なく戦争に巻き込まれていきます。戦争に強く反対していたトーベは、15歳の時にスウェーデンの風刺雑誌「GARM」に初めて挿絵が掲載され、その後も独裁者たちを痛烈に皮肉した風刺画を描くようになりました。
トーベがムーミンの物語を書き始めたのは戦争の最中でした。「戦争や暴力のない、さまざまな生き物が調和して生きられる世界を願い、生き生きとした緑の谷に、さまざまな生き物や家族のキャラクターに満ちたムーミン谷」を本の中で作り上げました。
本展では、トーベが生みだした「ムーミン」シリーズの多彩なアートと奥深い物語の魅力を約500点の展示品で紹介します。小説や絵本の挿絵、表紙の原画やスケッチ、キリストの復活を祝うイースターカードや銀行の広告なども並びます。これまでアニメや絵本では見たことのない「ムーミンとそのなかまたち」の多彩な表情にも出会うことができます。会場でご鑑賞いただけますと幸いです。

▽ムーミン展は9月1日まで。料金は一般1,400円(前売り1,200円)、大学・高校生1,000円(同800円)、小中学生700円(同500円)。

大分県立美術館 主幹学芸員 宇都宮壽


大分合同新聞 令和元年6月22日朝刊掲載