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OPAMブログ

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「坂茂建築展-仮設住宅から美術館まで」 第2回

展覧会 2020.05.13

紙などを使い斬新な手法
「街に開かれた縁側」体感して

大分県立美術館(OPAM)は4月、開館5周年を迎えた。それを記念して同館設計者で、建築界のノーベル賞といわれるプリツカー賞を受賞した坂茂の展覧会「坂茂建築展~仮設住宅から美術館まで」が11日から始まる(7月5日まで)。見どころをOPAMの学芸員が紹介する。


坂茂氏は国際的に評価の高い建築物を数多く手掛けています。紙など新しい資材を使ったり、斬新な手法を開発したりする一方で、災害支援活動家としての顔を持ち、25年以上にわたり全世界で難民や被災者のための支援プロジェクトを行ってきました。本展では、その坂氏の活動の全貌を紹介します。

本展は展示も特徴的で、開館以来最大規模となります。1階の展示室以外にも自由に出入りできるアトリウムエリアの大部分のスペースを使う予定です。

展示エリアの半分を占めるアトリウム空間は無料の観覧ゾーンです。このスペースでは、2011年の地震で甚大な被害を受けたニュージーランドの都市クライストチャーチに建てられた「紙の大聖堂」の10分の1サイズの模型や、同年の東日本大震災や16年の熊本・大分地震などでも活用された「避難所用間仕切りシステム」の実物など災害支援活動を中心に紹介します。

展示室の有料の観覧ゾーンでは、17年にパリ郊外のセーヌ川の中州にオープンした複合音楽施設「ラ・セーヌ・ミュジカル」や、同年に静岡県富士宮市にオープンした「静岡県富士山世界遺産センター」などの実物大の部分模型やモックアップ(実物とほぼ同じように再現された模型)の他、映像や写真などを紹介します。

1階の展示室は通常、壁に閉ざされており、中に入らないと様子が分かりませんが、本展では壁を置かないことで外から展示室の中の様子を垣間見ることができるような仕組みになっています。また、天候など条件が整った場合には、国道197号に面したガラスの水平折り戸を開放し、街と一体化させることも計画しています。

坂氏が掲げたOPAMの基本コンセプト「街に開かれた縁側としての美術館」を体感していただける機会になることと思います。これまでとは違うOPAMの新しい展示空間をぜひお楽しみください。

(大分県立美術館主幹学芸員・宇都宮壽)
 

紙の大聖堂 ©Stephen Goodenough
紙の大聖堂 ©Stephen Goodenough
避難所用紙の間仕切りシステム ©Voluntary Architects' Network
避難所用紙の間仕切りシステム ©Voluntary Architects' Network
ラ・セーヌ・ミュジカル ©Didier Boy de la Tour
ラ・セーヌ・ミュジカル ©Didier Boy de la Tour


大分合同新聞 令和2年5月9日掲載