コレクション展Ⅲ「天国と地獄」【上】
2020.08.21
“生きている実感”を想起
仏や神、精神の葛藤など描く
大分県立美術館(OPAM、大分市寿町)は、コレクション展Ⅲ「天国と地獄」を開催している。見どころを同館の学芸員が紹介する。
「天国」と「地獄」は東洋、西洋問わず、信仰上の概念としてだけでなく、日常の生活の中でも身近な言葉や概念として使われています。
キリスト教では「天国」は正しい生活を送った信徒の霊が永久の祝福を受ける世界を意味し、地獄は神の教えに背いた者、罪を犯して悔い改めない魂が陥って永遠の苦を受ける世界を意味しています。
仏教では、天国に近い言葉として「極楽」があり、西方のはるか彼方(かなた)にある広大無辺にしてさまざまなことが十分に満ち足りている安楽な世界のことです。「地獄」はこの世で悪事をした者が死後に苦しみを受ける世界としています。
私たちも日常生活の中で、快適な環境や理想的な世界のことを天国や極楽に例えたり、苦しみをもたらす状態や境遇のことを地獄に例えたりすることがあります。
会場では、OPAMの所蔵作品の中から仏や神を描いた作品の他、近世の画家が夢見た桃源郷や、現代社会を生きる画家の精神の葛藤など、天国と地獄のイメージに関連した作品を紹介しています。2002年の第10回バングラディシュ・ビエンナーレでグランプリを受賞し、国内外で高い評価を受けている現代作家・真島直子の「地ゴク楽(JIGOKURAKU)」や「脳内麻薬」の作品群も一堂に展示しています。
これらの作品は、私たちが普段の生活の中で体感せざるをえない身近なテーマである“生きている実感”を強く想起させる力があります。誰も見たことのない天国と地獄の世界を想像力豊かに表現した作品を楽しんでください。
(大分県立美術館 主幹学芸員 宇都宮壽)
▽「天国と地獄」は9月29日まで、3階コレクション展示室で。観覧料は一般300円、大学・高校生は200円。中学生以下無料。
展示された「地ゴク楽(JIGOKURAKU)」、右は「脳内麻薬2」 |
大分合同新聞 令和2年8月21日掲載