びじゅチューン!× OPAM なりきり美術館 第3回
2021.02.28
国宝の水墨画から着想
「びじゅチューン!×OPAM なりきり美術館」は、世界の美術を歌とアニメで紹介するNHK・Eテレの人気番組「びじゅチューン!」とのコラボレーションです。番組はアーティストの井上涼さんが作詞、作曲、アニメ、歌の全てを手掛けています。
大分県立美術館(OPAM)3階東側の展示室には、安土桃山時代の絵師・長谷川等伯(1539~1610年)が手掛けた水墨画の傑作の一つで国宝の「松林図屛風(びょうぶ)」を題材にした、アニメ「松林ズ」のコーナーがあります。雪山をバックにかすみで見え隠れする松がステージで踊りながら登場してくるシーンに見えたことから作られたアニメです。松林図屛風の高精細な複製品を使った「松林ズ」のステージとともに、竹田市出身の田能村竹田(1777~1835年)の代表作「高客聴琴図屏風」や「稲川舟遊(しゅうゆう)図」(3月21日まで展示)など「豊後南画」の作品が並びます。
続いて、日本水墨画の巨匠として知られる室町時代の画僧・雪舟(1420~1506?年)の国宝「山水長巻」を題材にしたアニメ「通勤フロム山水長巻」のコーナーです。長巻の端から端まで見ていたところ、長い道のりで険しい岩などもあることから、もしここを毎日通勤している人がいたら、大変だろうという着想を基に作られました。アニメーションの場面とともに四季の自然の変化を描いた長さ約16mの絵巻物の複製品を展示しています。
実は雪舟は大分とも縁があり、そのエピソードも紹介しています。雪舟は文明8(1476)年ごろ、豊後府内(大分市)に滞在し、「天開図画楼(てんかいとがろう)」という画室を設けて作画活動を展開していました。滞在中に描いた「鎮田瀑図(ちんだのたきず)」(1923年の関東大震災で消失)は、豊後大野市大野町の沈堕の滝を描いたものです。会場では、江戸時代の御用絵師、狩野常信(1636~1713年)が忠実に模写した「鎮田瀑図」や、中津市出身の洋画家、諫山麗吉(1851~1906年)の「沈堕之瀧」などを紹介しています。
▽大分県立美術館(OPAM)の開館5周年記念事業「びじゅチューン!×OPAM なりきり美術館」は5月9日まで。入場料は一般300円、大学・高校生200円。中学生以下無料。
(大分県立美術館 主幹学芸員 宇都宮壽)
びじゅチューン!「通勤フロム山水長巻」 | 雪舟 《山水長巻》 (高精細複製品、毛利博物館)[部分] |
大分合同新聞 令和3年2月27日掲載