佐藤雅晴 尾行―存在の不在/不在の存在 第1回
2021.05.08
不確かさ、はかなさ映し出す
光り輝く可能性感じる
県立美術館では、15日から企画展「佐藤雅晴 尾行―存在の不在/不在の存在」を開催します。 (4回続き)
佐藤雅晴は、1973年臼杵市生まれ。大分県立芸術文化短期大付属緑丘高(現芸術緑丘高)を卒業後、東京芸術大油画学科に進学、同大大学院修士課程を修めます。その後、ドイツに渡り、10年間デュッセルドルフを拠点に活動した後、帰国し創作活動を続けました。
佐藤は、日常風景をビデオカメラで撮影した後、その映像をパソコンに取り込み、ペンツールを用いて慎重にトレースする「ロトスコープ」技法でアニメーションや平面の作品を創作。その作品には、見る者に、現前に映る事物の実在感と共に、不確かさやはかなさなどを感じさせる独特の世界観があります。
2009年には第12回岡本太郎現代芸術賞で特別賞を受賞。近年では、原美術館での個展「ハラドキュメンツ10 佐藤雅晴―東京尾行」(16年)のほか、オーストラリアのシドニーでも個展「TOKYO TRACE 2」(17年)を開催するなど、国内外で精力的に作品を発表し、高い評価を受ける中、19年、45歳の若さで惜しまれながら亡くなりました。
本展は、佐藤の活動の全貌を紹介する世界初の大回顧展になります。代表作の「Calling」「東京尾行」「福島尾行」などの映像作品をはじめ、フォトデジタルペインティングやアクリル画など53点の作品を展示します。
生の不確かさやはかなさなど、私たちがどこかで感じているものが作品に鮮明に映し出されているからこそ、そこにある生の存在に希望や光輝く可能性を感じる―佐藤の作品の魅力はそこにあります。ぜひ、会場でその作品の数々をご覧ください。
また22日から、毎週土曜午後2時に学芸員によるギャラリートークも開催します。学芸員の解説を聞きながらの作品鑑賞もぜひお楽しみください。
(県立美術館学芸企画課長 宇都宮壽)
▽企画展「佐藤雅晴 尾行―存在の不在/不在の存在」(大分合同新聞社など共催)は、大分市寿町の県立美術館で6月27日まで。
観覧料は一般800円、大学・高校生500円。
佐藤雅晴 《Calling(ドイツ編)》 (2009-2010年) |
佐藤雅晴 《東京尾行》 (2015-2016年) |
佐藤雅晴 《福島尾行》 (2018年) |
大分合同新聞 令和3年5月8日(土)掲載