「大本山 相国寺と金閣・銀閣の名宝」寄稿記事【上】
2022.12.16
大分市寿町の県立美術館で「大本山相国寺と金閣・銀閣の名宝」(大分合同新聞社共催)が開かれている。近世日本絵画が専門の同館の田沢裕賀(ひろよし)館長が見どころを紹介する。
京都の金閣寺・銀閣寺は、修学旅行などで訪れた人も多いでしょう。金閣は、室町幕府の3代将軍足利義満が京都北山に建てた別荘、銀閣は8代将軍義政の別荘で、2人の死後に禅宗の寺院となりました。それぞれ室町時代の北山文化、東山文化を代表するものとしてよく知られています。
しかし、その中に何があったのか、ご覧になった人は少ないのではないでしょうか。金閣寺と銀閣寺は、相国寺の塔頭(たっちゅう)。いわば支院で、本山相国寺の下に属します。今回は、これらの寺から宝物をお借りしての展覧会です。
重要文化財に指定された作品は、確実に次世代へ継承するために、文化財保護法の取扱要項で移動や公開の指針が決められています。展覧会などにお借りした書画の公開は年間2回、延べ60日以内とされているので、展覧会では30日で展示替えされることがほとんどになります。
今回はそのような重要文化財が12点含まれています。鑑定のテレビ番組で、本物がないとよく言われるのが、雪舟、円山応挙、そして田能村竹田です。大分で竹田の本物を見る機会は時々あるでしょうが、雪舟、応挙の名品とお目にかかる機会は多くはないでしょう。本展覧会ではその2人の代表作が展示されていますが、25日までの作品があります。重要文化財の公開制限があるからです。
雪舟の「毘沙門天(びしゃもんてん)像」は、山水画の多い雪舟には珍しい仏画です。水墨による表現で、勢いのある速筆による躍動的な線描は、留学した中国で宗教的人物画を学んだ経験から生み出されています。雪舟は中国から帰った後、一時期、府内(大分市)の「天開図画楼(てんかいとがろう)」と名付けたアトリエで作画を行っていました。
応挙の代表作である「孔雀(くじゃく)牡丹(ぼたん)図」も必見の作品。応挙が30代後半に多くの作品を描いた滋賀県の円満院に伝わったもので、精緻な描写を特徴とし、立体的実在感と奥行きのある空間による見えるがままの表現は、当時としては革命的なものでした。27日からは、やはり円満院旧蔵の「大瀑布(ばくふ)図」に入れ替わります。円満院の文化財流出の危機に際して相国寺に入ったものです。
(大分県立美術館 館長 田沢裕賀)
丸山応挙「牡丹孔雀図」相国寺蔵(重要文化財) |
雪舟「毘沙門天像」相国寺蔵(重要文化財) |
大分合同新聞 令和4年12月16日掲載