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「養老孟司と小檜山賢二「虫展」 〜みて、かんじて、そしてかんがえよう」寄稿記事【下】

寄稿 2024.08.09

 本展の最後のコーナーでは、大分昆虫同好会の協力により大分の昆虫を紹介しています。
 大分県は全国でもトップクラスの多くの種の昆虫が見られる地域です。現在、県内で確認されている昆虫は1万種を超えています。
 本県は山も川も多く、平野も盆地もあり、海岸には半島が突き出して複雑に入り組んだリアス式海岸が形成されています。この複雑で多様な自然が多種多様な昆虫たちを育んでいるのです。
 タマムシは、国内で224種が生息していますが、県内では117種が確認されています。これは日本一の数であり、それだけ豊かな自然があり、調査研究が進んでいる結果だといえます。この中には、県内で発見された新しい種や九州では大分県でしか見つかっていない種もあり、まだ名前が付いていない未記載種も含まれています。
 クワガタムシは、カブトムシと並んで子どもたちに大人気の昆虫です。樹液に集まる習性があり、比較的見つけやすいので、近くの林で見つけたことがあるという方も少なくないでしょう。コクワガタやノコギリクワガタなどがおなじみですが、県内では17種が確認されています。金緑色に美しく輝く体が特徴的なルリクワガタの仲間も3種生息しています。
 チョウは、日々の生活の中で最もよく目にする身近な昆虫ですが、県内では130種が確認されています。中でもゼフィルスと呼ばれるシジミチョウ科の一群は美しい種が多いため、人気のチョウです。ゼフィルスは日本に25種が生息しており、うち17種が県内で確認されています。瑠璃色の羽が特徴的なオオルリシジミは本州と九州の一部地域でしか見られない希少なチョウです。
 筑後川、山国川、大分川、大野川、番匠川など水に恵まれた大分県では、田園地帯のため池や小川も多く、多様な水生昆虫が生息しています。会場では近年絶滅の危険性が高まっているミズスマシの生態を映像で紹介するとともに、「空飛ぶ宝石」と呼ばれる美しいトンボたちの姿を写真で紹介しています。
 大分県は他県の方がうらやむ昆虫の宝庫です。養老孟司先生も毎年のように来県し、昆虫採集を楽しんでいます。身近な自然の中でも、目を凝らすと、いろんな昆虫たちに出合えます。会場では、普段なかなかお目にかかれない希少な昆虫たちの標本をたっぷりご覧いただけます。この機会にぜひ驚きと不思議に満ちた「虫」の世界に浸ってみてはいかがでしょうか。

(大分県立美術館主幹学芸員 吉田浩太郎)

令和6年8月9日 大分合同新聞掲載

 

オオルリシジミ ルリクワガタ
オオルリシジミ ルリクワガタ