2022.03.21
新国画会大分作家展が大分市寿町の県立美術館で開かれている。21日まで。観覧無料。8人の作家の15点が展示されている。同館の宇都宮壽学芸企画課長の展評を紹介する。
1918年に「創作の自由を尊重するを以(もっ)て第一義となす」の理念の下、京都の新進気鋭の画家たちにより創設された「国画創作協会」。その後、活動は全国的な広がりを見せ、60年に「国展大分作家展」も結成される。会名の変更などで中断した時期もあったが、2012年に再結成する。20年の8回展で終止符を打つことになったが、存続を望む若い作家の尽力により、開催の運びとなったのが「新国画会大分作家展」である。 創設の理念を示すように、それぞれに独自の表現スタイルで創作された作品が、主張しすぎるでも、他を拒絶するでもなく、共生するような展覧会であった。各作家の感想を述べる。
丸山薫は、点描で描かれた寒色系の横顔が周囲を取り囲む中、内側から宙に向かうように前を見つめる六つの黄色い顔、そのコントラストと混沌(こん/とん)が織りなす画面に「希望」を映している。渡辺雄嗣は、画面にせり出すように大きく描かれた茶褐色の廃船の船首を描き、見る者に、その姿だけではなく、後ろの情景にも思いを巡らさせる。
二宮孝子は、背面を覆い隠すように塗り込められた灰色と白の色面、そのど真ん中や端々に垣間見せる色彩の渦に自身の内面を表出させる。園田ゆかりは、巨大なサイや羽を広げるクジャク、それらとともに前を向き静かにたたずむ女性の姿に「共生」を祈念する。
大庭和徳は、複数の平面作品や黒いフレームの一片などを使い、展示壁面に一つの像を結ばせる。藤沢徹道は、ローマ数字という数を表す記号を画面に無数に配すが、そこには本来の役目を捨て、画面の奥底の混沌や画面から飛び出していくようなエネルギーが生まれている。
御手洗賢治は、鮮やかな色面と抽象化された人の姿など、一見明るくユニークにも感じられながらも、その奥にはさまざまな社会課題を示唆する。山村艶子は、みずみずしく鮮やかな断面や炭化した断面など、さまざまな表情を見せる木々たちに雄弁に物語を語らせている。
これらの作品を会場でぜひご覧いただきたい。
丸山薫 《希望 宙Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ》 |
渡辺雄嗣 《3.11 廃船》 |
大分合同新聞 令和4年3月19日(土)掲載