2022.05.07
今回は、多岐にわたるコシノジュンコの創作活動を紹介します。
まずは、1996年にキューバで開催したファッションショーの仕事。キューバでのファッションショーは、パリコレクションなどのプロのモデルがランウエーを歩くものではなく、現地のプロのダンサーが衣装をまとい踊るサルサの地ならではのスタイル。現地のプロのダンサー約60人と1日8時間の練習を20日間続け、ショーの当日を迎えます。屋根がない屋外の会場にばねのような褐色の体のダンサーたちが着こなす原色のコスチュームが、サルサのリズムに乗って白日夢のように乱舞、オールスタンディングの観客も一斉に踊り出す大熱狂のショーとなりました。
次に紹介するのが、国内のみならず世界各国で公演を開催する和太鼓エンターテイメント集団「DRUM TAO(ドラムタオ)」との仕事。コシノジュンコのTAOとの出会いは2011年の東京公演。舞台を見た瞬間にTAOの魅力を見抜き、衣装を変えたらもっと面白くなり、ブロードウェーでも活躍できるし、さらに大きく羽ばたいていくだろうと感じたといいます。それ以来、TAOの衣装を手がけており、これまでに作られた舞台衣装は累計数千着以上に上っています。
最後に紹介するのが、21年9月に開催された「TOSHIMA ARTS LIVE 2021」。この事業は、新型コロナウイルス禍における文化芸術活動を支援する文化庁の「ARTS for the future!」の一環として企画されたもの。池袋グローバルリングシアター(東京・池袋)を舞台に、オーケストラ、オペラ、コンテンポラリーバレエ、モードの各界のスターが共演する新たな野外エンターテイメントをコシノジュンコがプロデュースしました。
「ファッションデザイン」といういわば一つの媒体(メディア)を通して、さまざまな人や文化、芸術と交わり、相互に昇華させていくコシノジュンコの創造の力も会場でご覧いただきます。
(大分県立美術館 学芸企画課長 宇都宮壽)
▽大分県立美術館(大分市寿町)の「コシノジュンコ『原点から現点』」(大分合同新聞社共催)は5月29日まで。
入場料は一般1400円、大学・高校生千円。中学生以下無料。
=連載終わり=
ファッションショー in キューバ (1996年) |
DRUM TAO『RHYTHM of TRIBE~時空旅行記』(2018年) |
大分合同新聞 令和4年5月7日(土)掲載