2025.02.15
大分市寿町の県立美術館で「大絵本美術展 童堂賛歌」(大分合同新聞社共催)が開かれている。同館の担当学芸員が見どころを紹介する。
ザ・キャビンカンパニーは、由布市挾間町の廃校(旧石城西部小)を制作拠点に、絵本や絵画、立体、イラストレーション、映像など、日々さまざまな作品を生み出している阿部健太朗(1989年~)と吉岡紗希(88年~)による2人組のアーティストです。
本展は、大分に生まれ育った2人のユニット結成15周年を記念して、活動初期から現在までの絵本原画約400点に加え、立体造形、映像作品などを一堂に紹介する一大回顧展。平塚市美術館(神奈川県)を皮切りに、足利市立美術館(栃木県)、千葉市美術館と巡回し、本年度の最後を飾るのが地元の大分県立美術館です。
展覧会のタイトル「童堂賛歌」とは、本展のためにつくられた言葉です。飽きることなく何十回でも何時間でも滑り台で遊び続ける、子どもの時間の捉え方や感覚に象徴される「童」と、本屋や薬局、駄菓子屋などの店名にも使われるお堂の「堂」=「万物を受け入れる」という意味が組み合わされています。約千平方㍍の展示室は七つのテーマの部屋に分かれており、まるで空間が大きな1冊の本になったような仕掛けが満載です。
その第1室にある「明ける海」は、大分大在学中の2009年にユニット結成後、手作りの絵本「ボンボとヤージュ」を手に出版社に持ち込みをしていた最初期に描かれた1点です。この頃は海や船をモチーフとした鮮やかな色彩の作品が多く生み出されており、まさに芸術という名の大海にこぎ出そうとする彼らの心中を伝えるようで、こちらまでわくわくした気持ちの高まりを感じます。同時に、南蛮屛風のような巨大な画面には、大分を思わせるモチーフが随所に配されており、彼らの創作の原点が大分での記憶と日々の生活にあることを物語っています。
会場はまさにキャビンの大海原そのものです。子どもたちも、かつて子どもであった大人の皆さまにもぜひ、不思議な冒険を楽しむ気持ちでご来場いただきたいです。
(県立美術館上席主幹学芸員 池田隆代)
▽会期は4月13日まで。入場料は一般千円、大学・高校生800円。中学生以下無料。
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《明ける海》2015年 |
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ザ・キャビンカンパニー(左:阿部健太朗、右:吉岡紗希)撮影:橋本大 |