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「朝倉文夫生誕140周年記念 猫と巡る140年、そして現在」寄稿記事【3】
豊後大野市朝地町出身の朝倉文夫は、自然を愛して尊んだ芸術家である。その著作の一部からは、朝倉が老子の自然観に賛同していたこと、そこから理想とする芸術を展開していたことが分かる。朝倉にとって、自然であることを模範とする人が、自然を対象として、その美を表現したものこそ永遠の芸術であった。作品は自然の一部を成すようなものでなければならず、自然を自然の通りに写した作品こそが理想だった。
そうした理想に至った朝倉の作品は、モデルになった人の特徴をありのままに表している。例えば、「大隈重信像」や大分市遊歩公園の「滝廉太郎像」を挙げることができる。
写実的という点では猫の作品も同様だ。本展では、「よく獲たり」のような、猫の実際の動きが感じ取れるような作品を展示している。また、「居眠る猫」や「はるか」のように自然体でくつろぐ像も紹介している。気取らない姿を、普段私たちが目にする猫の姿に重ねることもできるだろう。さらに朝倉が詠んだ俳句からは、猫への素朴な愛情が伝わってくるかのようだ。
そうした親しみやすさを入り口として、朝倉の創作についてさらに詳しく知りたいと思ったとき、県内では、豊後大野市の朝倉文夫記念館が多くの機会を提供してくれる。県外では、台東区立朝倉彫塑館でアトリエと住居を見ることができる。美術館の外では、各地で作品が設置されている。その位置を示したのが、本展ホームページの屋外彫刻マップだ。
これは、先に挙げた2館の協力と、ウェブデザイナーの木ノ下結理氏の技術で制作されたものである。北は北海道から南は九州に至るまで、旅や散歩をしながら気軽に鑑賞することができるだろう。本展をきっかけとして、県内外で、美術館内外で、朝倉の創作を楽しんでいただきたい。
(県立美術館学芸員 梶原麻奈未)
令和5年6月24日 大分合同新聞掲載
朝倉文夫彫刻マップ