OPAMブログ
2023(第53回)大分自由美術展
みなぎる意欲と感性
創作の進化や深化伝わる
第53回大分自由美術展が大分市寿町の県立美術館で開かれている。10日まで。入場無料。大分自由美術の作家8人の絵画26点が並ぶ。県立美術館学芸企画課長の宇都宮壽さんの展評を紹介する。
自由美術は形式や技術にとらわれず、新鮮さや個の資質を大切に自由な表現を求める美術団体。大分自由美術展は東京で開催される自由美術展(10月4~16日、国立新美術館)に出品する県内作家による展覧会である。団体の趣旨を体現するように、何に寄せられるでも、感化されるでもなく、それぞれに独自の表現やテーマに取り組んでいる。そして、今年は一段とその創作の進化や深化が進められているように感じる。各作家の感想を述べる。
庄司由政は、これまでの乳白色を主体とし画面に「想」を映す作品群に加え、やや強めの彩色が画面を構成する新たなシリーズにも踏み出した。平山堯通は、宇宙空間や時空のうねりを感じさせるダイナミックな画面に一段と深みやすごみを与えている。
大塚和子は、生のみなぎりや消失をイメージさせる「夏」や人々の暮らしやぬくもりを思わせる「冬」を大小の色点の積層だけで静かに、しかし雄弁に表した。淡い球体の色面で構成する菅記昭の「体内回帰」シリーズは、見る者に原初と現在とを自由に行き来させる不思議な力を有する。
堤凱子は、淡いだいだいの中に浮かび上がる人形(ひとがた)とまなざしに人のぬくもりや息遣いを映し出す。日和佐治雄は、四角いキャンバスに彩色されたユニークな形態の幾つものピースにより仏教の教えを映す。
日名子金一郎は、白と青の点が折り重なるように埋め尽くす画面が、見る者を独自の世界=「けしき」に誘う。柏真由美は、一枚のタブロー(作品)に濃密な物語の世界を繰り広げている。
それぞれに独自の絵世界を有す、これらの作品をぜひ会場でご覧いただきたい。
大分合同新聞 令和5年9月8日掲載