OPAMブログ
点転天展
若き創作者たちの「非調和」
由布市挾間町で「点転天展」
「点転天展」が由布市挾間町のホーノキアトリエで開かれている。11月13日まで、金~月曜日のみ開催。入場無料。県立美術館学芸企画課長の宇都宮壽さんの展評を紹介する。
ホーノキアトリエとは、美術家・榎園歩希が2021年から旧朴木小の一部をアトリエとして活用しているスペース。本人の創作に使うほか、週2日は小学生から20代前半までの25人も制作を行っている。
榎園と彼らは、先生と生徒ではなく、それぞれに制作をしながら、場を共有している関係であるという。そのため、榎園はここに加わる人には初めにその旨を話し、自分のことは「歩希さん」と呼ぶように伝えている。
「点転天展」は、彼らと榎園が作品を発表する年に1度の展覧会。抽象画もあれば、細長い体の上に生き物の顔を載せた立体や、カラフルに彩られた両手に載るほどの大きさの木枠の中に不思議な生き物が正面を向くものもある。かわいらしい猫が描かれたTシャツ、風景などが描かれたA4サイズの手提げバッグ、絵画・立体・映像などを使ったインスタレーションなど、それぞれのスタイルで創作された作品が展示されている。
この展覧会のコンセプトの肝は「非調和」。以下、榎園のメッセージの一部を引用する。
調和が求められがちな日本に疑問を呈したい。
それぞれが放射状に自己を発揮した時に、本当にこの世の均衡は崩れるのだろうか。むしろ互いの放射線が重なり合い、刺激し合い、絡まり、化学反応的に形が変わり、無数の色が重なってモザイクのような宇宙的有機的な調和が現れるのではないか。
私は子供や若者に、全身全霊の自己放射をしてほしい。宇宙に向けた無数のランダムなベクトル光線は、想像するだけで美しい。
以前あるセッションで「表現とは何か?」を改めて考え、話すことがあり、次のように話をした。突き詰めると「生きること」「生きる実感を感じること」ではないか。彼らもここの活動を通して、そのようなことも感じているのではないだろうか。
展示作品の多くは販売もされているので、一般の方も購入することができる。榎園と彼らの間には一つの約束があるという。それは、手にした代金の一部を寄付しようということ。ここでは創作だけでなく、経済や社会のことも学んでいる。
この機会に、若き創作者たちの渾身の作品とホーノキアトリエのすてきな取り組みを、ぜひご覧いただきたい。
大分合同新聞 2023年11月4日朝刊掲載