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「ザ・キャビンカンパニー大絵本美術展<童堂賛歌>」寄稿記事【中】
ザ・キャビンカンパニー(キャビン)の「大絵本美術展 童堂賛歌」では、キャビンが描いた展示室マップを片手に会場を巡ります。第2章「オボロ屋敷」は影絵遊びから着想された映像インスタレーション作品です。骸骨、竜、クモ、機関車、レトロな街並みなどが交錯する幻想的な作品で、来場者は影絵の一部になったつもりで遊んでいただきたい空間です。
続いて、暗幕を開けた第3章。まさに夢の遊園地に迷い込んだような「アノコロの国」に進みます。キャビンは大学時代から絵画と立体作品の制作に並行して取り組んでおり、この制作活動は絵本作家としては非常にまれなことです。
2015年のJR九州デスティネーションキャンペーンにちなんだ「白鬼」(JR別府駅に設置)、初期の「小さなサーカスの国」「チョコレート宮殿」の向こうには、21~22年にJR大分駅に展示されインターネット上で話題となった「キメラブネ」が鎮座します。主に段ボールにアクリル絵の具で彩られた建物や動物たちは、その少しゴツゴツとした肌合いやラフな色付け、手描きの線がそのまま立体になったような風貌が混然となって、どこか懐かしい雰囲気を醸し出しています。太陽と月が同時に輝く展示空間は、キャビンがこの展覧会のために制作した1万本の草によって、時空を超えて一体化し、来場者は時が止まったような不思議な感覚に包まれることでしょう。
ここでは、巨大な作品に目を奪われますが、ぜひとも街や宮殿に配されたさまざまな小さな人たちに目を留めていただきたいです。彼らの表情は一つとして同じものはなく、どれも大きな身ぶりと豊かな表情が魅力的です。それぞれに生い立ちや性格などストーリーを考えながら作られたのではないかしら?と思ってしまうほどに愛くるしく、生き生きとしています。同時にキャビンの創造することへの心からの喜びと貪欲さも感じさせ、その後の絵本のバリエーションの豊かさを思えば、こうした立体作品たちがキャビン世界の原住人であり、源泉ともなっていると思われてなりません。
(県立美術館上席主幹学芸員 池田隆代)
▽「大絵本美術展 童堂賛歌」(大分合同新聞社共催)は大分市寿町の県立美術館で4月13日まで。入場料は一般千円、大学・高校生800円。中学生以下無料。