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「ザ・キャビンカンパニー大絵本美術展<童堂賛歌>」寄稿記事【下】
ザ・キャビンカンパニー大絵本美術展<童堂賛歌>展のクライマックスは、当館の壁面高さ5.5メートル×9メートルを覆いつくす絵本原画インスタレーションです。2014年に初出版された『だいおういかのいかたろう』に始まり、大分市のわさだタウン前の信号機から着想を得た人気の『しんごうきピコリ』(2017年)、娘さんの誕生とともに生まれた『あかんぼっかん』(2018年)、地元のパン店に取材した『どうぶつパンパン』(2019年)などから、近年高い評価を受けた『がっこうにまにあわない』(2022年)や『ゆうやけにとけていく』(2023年)、最新作『ミライチョコレート』(2024年)まで。これまでの10年間に出版された40冊、約400点の明るく鮮やかな原画が来場者を迎え入れます。
二人で一つの作品を創造する行程に興味を持つ方も多いかと思いますが、まず物語を交換日記のようなやり取りで構成。その後、人間や動物など有機的なモノを吉岡氏が、建物や人工物など無機的なモノを阿部氏が描くといスタイルを基本としています。いずれもキャラクターはシンプルでありながら表情やポーズが豊かで、絵の中にユーモラスな要素や遊び心が散りばめられており、図柄が物語を語るように配置されています。大分の豊かな自然を思い起させる背景や題材も多くみられ、空想でありながら、どこか懐かしく、身近な存在に感じられます。
会場では400点の原画が綺羅星のごとく輝きながら、決して雑然とならず、まるで大きな絵本を見開いたように見えてきます。彼らの絶妙の色彩感覚に驚くとともに、絵柄のスタイルは様々でも、常に子どもたちに、時には自分たちと同じ「子育て」世代に、芸術を通して何かを伝えたい、応援したい、という強い意志が流れているからではないかと思います。拙者は『絵本』は子どもたちが人生を歩む道標だと考えています。彼らが、多くの人の人生の灯台となって心を支える存在となるような、さらなる活躍を心から願っています。
(県立美術館上席主幹学芸員 池田隆代)
▽「大絵本美術展 童堂賛歌」(大分合同新聞社共催)は大分市寿町の県立美術館で4月13日まで。入場料は一般千円、大学・高校生800円。中学生以下無料。