大分自由美術展
2021.09.03
新たな表現と境地への挑戦
第51回大分自由美術展が大分市寿町の県立美術館で開かれている。5日まで。入場無料。大分自由美術の作家9人の絵画や立体26点が並ぶ。県立美術館学芸企画課長の宇都宮壽さんの展評を紹介する。
自由美術は形式や技術にとらわれず、新鮮さや個の資質を大切に自由な表現を求める美術団体。大分自由美術展は東京で開催される自由美術展(29日~10月11日、国立新美術館)に出品する県内作家による展覧会である。団体の趣旨を体現するように、9人の出品者それぞれが新たな表現や境地に挑むさまがしっかりと伝わる内容になっている。各作家の感想を述べる。
庄司由政は、これまでの黄色など淡い色を主体とした画面から、白いキャンバスに白の絵の具を重ねることに挑み、湧き立つような独自の抽象世界を創出している。平山堯通(たかみち)は、絵の具をほとんど使わずにペンキなどの塗料で描く「形象」シリーズに取り組み、地表深くから湧き上がるマグマか、天地創造を思わせるような力強さを感じる。菅記昭(のりあき)は、これまでの柔らかなパステル系の色面で構成していた「体内回帰」シリーズのモノクロームの新作が印象的で、鑑賞者を画面の奥深くへと誘う。
日和佐治雄(はるお)は、かたどり彩色された幾つものピースをコラージュする独自の手法で仏教教義を題材に創作。脇正人は、グレーや茶、朱の上や合間を漆黒の線や点、塊が勢いよく駆け巡り、躍動感があふれている。大塚和子は、数多くの白く可憐(かれん)な香花(ジンジャー)が全体に咲き広がり、溶け合うような作品。みずみずしく幻想的に仕上げている。 堤凱子(よしこ)の「風に抱かれて」シリーズは、温かく包み込むようでもあり、澄んだ大気のようでもある画面に柔らかな線で描かれた女性の姿が溶け込んでいる。日名子金一郎は、これまでの白地の画面にブルーや水色の横長の点が漂い、揺らめくような「けしき」シリーズに、青や緑、紫などの無数の線や点が画面を覆う新作品を加えた。
立体作家の工藤明美は、年老いた母親があおむけで布団に横たわる「はい!」で驚かせた後、同じく母をテーマに、積み重ねた生きざまをポジティブに力強く表現した「ああ人生…楽しかった」を展示している。
自由で力強く、常に挑戦を続ける作家たちの姿を会場でご覧いただきたい。
庄司由政「想 2」 |
平山堯通「形象A」 |
絵画や立体が並ぶ「大分自由美術展」の会場 |
大分合同新聞 令和3年9月3日掲載