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OPAMブログ

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ザ・キャビンカンパニーがダンス公演の舞台美術制作

寄稿 2021.10.22

JR大分駅3・4番線ホームの「OPAM at Platform of Oita Station」の第1回目を担当したザ・キャビンカンパニーの舞台美術や展覧会の活動について、足利市立美術館学芸員 篠原誠司さんが大分合同新聞に寄稿した。
 

絵本と立体造形 重なり合う表現

東京の新国立劇場で7月2日、大分市在住の阿部健太朗と吉岡紗希による絵本作家ユニット、ザ・キャビンカンパニーが舞台美術を担当したダンス公演「オバケッタ」(主催・制作 新国立劇場、振付・出演 Co.山田うん)を鑑賞した。

「あの世とこの世の境目というのはどこにあるのでしょう?」という問いかけをテーマに、主人公ゆめたが夢と現実のはざまで出会ったオバケたちが、音楽に合わせて圧倒的なコンビネーションで舞う。ザ・キャビンカンパニーはここで、ゆめたの部屋のベッド、テーブル、電気スタンド、トイレ、壁などのセットを制作している。それらはどれも、絵本に描かれたものがそのまま飛び出してきたように、人や植物の温もりを思わせるかたちや色彩で表され、舞台を彩っていた。

公演の中で最も心躍らされたのは、オバケたちの群舞がワルツ調の「オバケッタのテーマ」とともに最高潮を迎えた第1部のエンディングだった。部屋の背景が突然ページのようにめくられて壁全体が巨大な絵本だったことに驚かされ、大型の深海魚リュウグウノツカイを基にしたという、竜のようにも見える巨大なさかなが動き出してダンサーたちを覆いつくすシーンでは、ダイナミックな動きを伴う色彩の氾濫が舞台全体を輝かせていた。

スロバキア共和国で 2年ごとに行われる絵本の国際コンクールの日本巡回展で、私が企画に携わった「ブラチスラバ世界絵本原画展 こんにちは!チェコとスロバキアの新しい絵本」が、茅ヶ崎市美術館(神奈川県)で11月7日まで開催されている。

ザ・キャビンカンパニーはここに、コンクールの入選作品である「ボンボとヤージュ」(2018年、学研プラス刊)の原画に加えて、6メートル近くにもおよぶ立体作品「アノコロの国」を出品している。段ボールや板、紙粘土などでできた宮殿、建物、人形をはじめとする167のパーツから構成されたこの作品は、奈良、千葉、栃木、埼玉の美術館を巡回してきたこの展覧会で、各会場の来館者から大きな注目を集めてきた。

ザ・キャビンカンパニーは、14年からの8年間で30冊もの絵本を出版してきたが、その大本には、ユニットによる制作が始まった当初の09年から2人の手が生み出してきた、「アノコロの国」にみられる立体造形があったといえる。このたびの「オバケッタ」では、ザ・キャビンカンパニーの作品が元から持つ、人の意識や記憶の中にあるもう一つの世界の姿が、舞台のテーマと重なり合って存分に表されていた。それは、絵本と立体造形の両方にまたがる新たな表現の誕生を、強く実感させてくれた。

(篠原誠司 足利市立美術館学芸員)
 

ザ・キャビンカンパニーの立体作品「アノコロの国」(2010〜2020年) 茅ヶ崎市美術館での展示
ザ・キャビンカンパニーの立体作品「アノコロの国」(2010〜2020年) 茅ヶ崎市美術館での展示


※「オバケッタ」は、新国立劇場で7月2日〜4日に行われた公演に加え、10月13日に長野県のまつもと市民芸術館で再演された。
※「ブラチスラバ世界絵本原画展 こんにちは!チェコとスロバキアの新しい絵本」は、2020年10月から2021年11月まで、奈良県立美術館(奈良県)、千葉市美術館(千葉県)、足利市立美術館(栃木県)、うらわ美術館(埼玉県)、茅ヶ崎市美術館(神奈川県)で巡回開催
 


大分合同新聞 令和3年10月15日(金)掲載