隣を。空間を。全体を。 教育普及グループ的な企画展の楽しみ方@竹工芸名品展③

 今回の展覧会は竹工芸の展覧会だからと言って、花籠やオブジェだけが並んでいるわけではない。メトロポリタン美術館の作品に合わせ、当館所蔵の作品と一緒に展示しているのが見どころだ。ちょっとストレート?と思う人もいるかもしれないが、展覧会は福田平八郎「竹」から始まる。その後、糸園和三郎「春夏秋冬−夏」、田能村竹田「稲川舟遊図」李 禹煥「照応」などが竹工芸の作品とともに並ぶ。中にはなぜこれがここに?と思う作品もあるかも知れない。そこは一点一点の竹工芸の作品を技法と形態を楽しみつつ愛でるのと同時に、大分県立美術館とメトロポリタン美術館が作品でつながれている空間全体を、散歩するように楽しんでほしい。展示室後半には古澤万千子「毬子いろは紋着物」と志村ふくみ「普門」の染と織りが対照され、展示室に色を添える。熊井恭子「いのち」はステンレススティールによるオブジェで、竹工芸とともに繊維造形の面白さを伝える。こうした展示は料理の盛り合わせに似ている。栄養バランス、味、そして美味しそうかどうかの見た目。それには味も触感も異なる食材による料理が求められるし、結果、互いの良さを引き立て合う。佐賀関・某店の海鮮丼ぶりは、何度も食べたくなるし、いろいろな人を誘いたい。ということで、相乗効果の“美”を味わいに、「竹工芸名品展」、一度ならず何度も、そして誰かを誘って来てほしい。会期は6月30日まで。
 
大分県立美術館 教育普及グループ 主幹学芸員 榎本寿紀