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OPAMについて

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建築について

街に開かれた縁側としての美術館

 一般的に美術館というとブラックボックスで、中で何が行われているかは入ってみないとわからないことが多い。そのため、本当はもっと多くの人が楽しめる場所であるのに、その機会を失ってしまっている。あまり美術館に行かない人たちをいかに引き寄せるか、そして美術を楽しんでもらい、日常的に人々が集まるそのような仕掛けを建築に与えた。
 1階は外からも中の様子がわかるようにガラス張りとし、無料で利用できる2層吹抜のアトリウムを設け、その中にミュージアムショップとカフェを設け、展覧会に興味がない人でも日常的に利用できるスペースとした。
 そして、アトリウム内を可動展示壁によって間仕切ることで展示室Aは作られる。展示室Aは壁を作ることも取り払うこともでき、オーソドックスな閉じた展覧会だけでなく、アトリウムと一体的な展覧会など、展示の内容に合わせたレイアウトが可能となっている。
 また、カフェとミュージアムショップも可動式となっており、展示室Aのレイアウトに応じて最適な配置ができる。このように、アトリウムは展覧会ごとに常に変化があり、何度来ても新鮮な雰囲気も作り出すことができる。
 更に、アトリウムの道路側は南側のファサードを全面、開閉可能なガラス水平折戸としている。ガラス水平折戸を開けるとアトリウムは、人々が自由に行き来できるパブリックスペース=縁側となる。ガラスは視覚的なつながりを生むが、実際には壁として存在してしまう。その壁を取り払うことで、美術館は街と一体化した施設となる。また、前面道路を歩行者天国とすると、美術館だけでなく、向かいのiichiko文化センターとも一体的なイベントも開催でき、2つの文化施設を中心に街に活気を生み出すことを期待している。

坂 茂(ばん・しげる)

写真:©Hiroyuki Hirai

建築概要

【所在地】大分県大分市寿町2番1号
【設計・監理】
 (建築)株式会社 坂茂建築設計
 (構造・設備)オーヴ・アラップ・アンド・パートナーズ・ジャパン・リミテッド
 (照明計画)株式会社 ライティング・プランナーズ・アソシエーツ
 (ランドスケープ)有限会社 オンサイト計画設計事務所
 (防災計画)株式会社 明野設備研究所
 (サインデザイン)コミュニケーションデザイン研究所
【施工】
 (建築)鹿島建設・梅林建設 建設共同企業体
 (電気)九電工・鬼塚電気 特定建設工事共同企業体
 (空調)須賀・西産 建設工事共同企業体
 (衛生)協和工業 株式会社
 (外構)梅林建設 株式会社
 (造園)株式会社 豊樹園
【工期】
 (本体)平成25年4月~平成26年10月
 (外構・造園)平成26年5月~平成27年3月
【区域】都市計画区域内(市街化区域)
【地域等】商業地域、準防火地域
【構造】鉄骨造一部鉄筋コンクリート造
【階数】地下1階+地上3階(一部4階)
【高さ】(展示棟)20.09メートル(管理棟)24.77メートル
【敷地面積】13,517.74平方メートル
【建物面積】16,817.69平方メートル
【ペデストリアンデッキ】全長 66.86メートル、幅 3.45メートル

設計者 坂 茂 プロフィール

坂 茂 Shigeru BAN

1957年 東京都生まれ
84年、クーパー・ユニオン建築学部卒業
82年から83年まで、磯崎新アトリエに勤務
85年、坂茂建築設計を設立
95年から2000年まで、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)コンサルタント、同年にNGO ボランティア・アーキテクツ・ネットワーク(VAN)を設立
現在、京都造形芸術大学芸術学部環境デザイン学科教授

 

<主な作品、活動等>
「カーテンウォールの家」、「ハノーバー国際博覧会日本館」、東京銀座「ニコラス・G・ハイエック・センター」、フランス国立近代美術館分館「ポンピドゥー・センター - メス」 、パリ郊外セガン島音楽ホール「シテ・ミュージカル」コンペ優勝(2013) 他多数

災害支援活動として、
阪神淡路大震災 神戸市長田区「紙の教会」(1995)、ルワンダ「国連難民高等弁務官事務所用の紙のシェルター」(1999)、四川大地震 中国「成都市華林小学紙管仮設校舎」(2008)、イタリア・ラクイア地震復興支援「仮設音楽ホール」(2011)、東日本大震災 宮城県女川町「コンテナ多層仮設住宅」(2011) 他多数


<主な受賞>
フランス建築アカデミーゴールドメダル(2004)、アーノルド・W・ブルーナー記念賞建築部門世界建築賞(2005)、日本建築学会賞作品部門(2009)、オーギュスト・ペレ賞(2011)、芸術選奨文化部科学大臣賞(2012)、フランス芸術文化勲章(2014)、プリツカー賞(2014) 他多数