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「ムーミン展 THE ART AND THE STORY」紹介 -第4回- 多様な生き方伝える「自由の書」

展覧会 2019.07.20

フィンランドの芸術家トーベ・ヤンソン(1914~2001年)は1940年代、スウェーデン語系の風刺雑誌「GRAM」の片隅に作者の分身として小さな生き物を登場させました。トーベはこの生き物を「ムーミントロール」と名付けて命を吹き込みました。そして、この生き物を物語の主人公にして、暗い影を落とす戦時中に一種の逃避となるような物語を書き始めました。それがムーミンの物語の第1作となる「小さなトロールと大きな洪水」(45年)になります。
以降、四半世紀にわたり、「ムーミン谷の彗星」「たのしいムーミン一家」「ムーミンパパの思い出」「ムーミン谷の夏まつり」「ムーミン谷の冬」「ムーミン谷の仲間たち」「ムーミンパパ海へいく」「ムーミン谷の十一月」の全9冊が刊行されました。
このシリーズは、ムーミン一家という家族を巡る小説でもあります。幸福で平和な一家の話が、一人息子であるムーミンの成長に伴い、ムーミンパパとムーミンママの間に変化をもたらし、家族そのものを問うものとなっていきます。
また、登場人物それぞれの個性を認め合うことの大切さや、自由に生きられる者がより自由に羽ばたいて生きられる姿、自由に生きられない者が自由を獲得して生きられる姿、一見、奇妙に見える生き方をしている者がそのままの自分で生きられる姿が描き出されている「自由の書」ともいえます。
ムーミンの小説は世界中の子どもから大人まで幅広い読者に人生のさまざまな見方や多様性を伝え、素晴らしい読書体験をもたらし続けてきました。会場では240点を超える小説の原画やスケッチを紹介しています。

▽ムーミン展は9月1日まで。料金は一般1,400円、大学・高校生1,000円、小中学生700円。

大分県立美術館 主幹学芸員 宇都宮壽

大分合同新聞 令和元年7月13日朝刊掲載